当院にお子さんを連れて来られる親御さんの多くは、とても優しい方です。
子どもを傷つけないように、無理をさせないように、言葉を選び、我慢しながら関わってこられています。
不登校の時期をきっかけに、そのまま長く引きこもった状態が続いているケースも少なくありません。
それでも、
「このままでいいのだろうか」
「何年も時間が止まっている気がする」
そんな思いを抱えながら、どうしていいか分からずに悩んでおられる方が少なくありません。
よくある経過
ある時点で学校に行けなくなる。
しばらく休んでいるうちに、「繊細な子」「発達特性があるのかもしれない」「メンタルが弱いのではないか」と、周囲が理解しようとして言葉を探し始めます。
学校からは
「無理をさせないで」
「そっとしておきましょう」
「そのうち良くなりますよ」
と繰り返し伝えられます。
親としても、傷つけてはいけないと思い、強いことは言えず、機嫌を損ねないように気を遣いながら日々を過ごすことになります。
親子関係が悪いわけではありません。
むしろ、表面上は穏やかで、大きな衝突もない。
それなのに、気づけば何年も同じ場所にいるような感覚だけが残ってしまう。
起きていることは、性格だけでは説明できないことがあります
こうした状況にあるお子さんを診ていると、
性格の影響がまったくないとは言えない一方で、
それだけで説明してしまうのは難しいと感じることが少なくありません。
「本当にできないことなのか」
「本当に傷つきやすくて耐えられないのか」
それとも
「試してみる機会がなくなってしまっただけなのか」
性格や特性も含めて、今どんな状態に置かれているのかを
一度立ち止まって整理する必要があります。
病名や性格だけで説明してしまうと、
「そういう子だから仕方ない」
という理解になりやすく、結果として、
チャレンジする経験そのものが失われてしまうことがあります。
当院で大切にしていること
当院では、まず
- 何がきっかけでつまずいたのか
- どこで動けなくなったのか
- 本人が本当に困っていることは何なのか
- 薬の使用を含めた医療的な対応が必要な状況かどうか
を、丁寧に整理していきます。
そして同時に、親御さんとも話をします。
「これは言っても大丈夫なこと」
「ここまで我慢しなくていいこと」
「親が抱え込まなくていいこと」
優しさゆえに縮こまってしまった関係を、少しずつ調整していきます。
親が強くなる、というよりも、親が楽になる関わり方を探していくイメージです。
親だけで相談が始まることもあります
本来は、お子さん本人にも来ていただけるのが一番です。
実際に話を聞き、一緒に考え、本人が納得しながら進む方が、回り道が少ないことも多いからです。
ただ、思春期から青年期にかけては、
「病院に行く意味が分からない」
「自分は困っていない」
と感じることも珍しくありません。最初は親御さんだけが相談に来られることもあります。
この場合は、いったん子供ではなく、親御さんの悩みとして扱います。
関わり方や距離感が少し変わることで、家庭の雰囲気が変わり、
結果的にお子さん自身が動き出し、後から受診につながるケースもあります。
親だけで十分、という話ではありませんが、親だけでもできることがある、というのは事実です。
変わるのは「環境」と「動き」
うまくいくケースでは、
別人のように見えるほど、本来の力が出てくることがあります。
それは無理に頑張らせた結果ではありません。
試しても大丈夫だと感じられる環境が整い、
失敗しても関係が壊れないと分かったとき、
自然に動き出した姿です。
最後に
もし今、
親子関係は決して悪くないけれど、
時間が止まったままのように感じているなら、
それは関わり方を見直すタイミングなのかもしれません。










